時計の電池交換をきっかけにご来店いただいた70代のお客さま。
お手持ちの宝石のメンテナンスやリフォームのご案内をしたところ、
お持ちの宝石についてお話しくださいました。
「最近では、ジュエリーを着ける機会もほとんど減ってしまって。
私も、昔、母から譲り受けた指輪があるんだけれど
このまま残しておいても誰も使ってくれないわよね。
形が古くてあまり自分でも使っていなかったから、
折角なら孫が使ってくれるようにリフォームしたいと思っているの」とのご相談でした。
後日、お母さまから譲り受けた二つの指輪をお持ちになって再来店くださいました。
一つは柔らかいコーラルピンクが印象的な可愛らしい指輪、
もう一つは透明色の宝石が付いた金の指輪でした。
両方ともご自身が28年前にお母さまから譲り受けたジュエリーで、
3人のお孫さんにいずれは使ってほしいとのご希望でした。
二つの指輪の宝石は大ぶりだったので、
「ネックレスにリフォームすることで、
いろいろアレンジもきいて扱いやすいと思います。
ネックレスでしたら、お譲りするときに
指のサイズなども気にすることなく使いやすいですし」とご提案したところ、
お客さまもご快諾くださり、ネックレスにリフォームすることになりました。
コーラルピンクの宝石は、周りにミル打ちが施されていたので、
そちらの原型を活かして、トップ(留め具)にゴールドとメレダイヤを施し、
アンティーク調のデザインをご提案しました。
また、透明色の宝石はピンクゴールドで枠を縁どり若々しいモダンな印象に仕上げました。
いずれは3人のお孫さまにお譲りになりたいとお客さまが仰っていたので、
それぞれお孫さんの趣味などをお聞きし、
合うように違ったタイプのデザインをご提案しました。
コーラルピンクの可愛らしい宝石
クラシカルなデザインを活かしてアンティーク調に
透明色のシンプルな指輪
スタイリッシュな枠取りのデザインでモダンなイメージに
「感動しました! もう使えないと思った指輪が
こんなにすてきに生まれ変わるなんてうれしいです」とお喜びになられました。
「もうジュエリーを使う機会なんてないと思っていたけれど、
これなら孫に譲るまで自分でも使ってみようかしら」と仰ってくださいました。
「お母さまの大切な指輪なので、
ぜひご自身でも充分に楽しんでからお孫さんにお譲りください」とお話しました。
ヨーロッパには家族で宝石を受け継ぐ
「ビジュー・ド・ファミーユ」(家族の宝石)という習慣があります。
祖母から母へ、母から娘へ、家族の愛の証として宝石を受け継いでいく、
ヨーロッパでは古くから伝わる習慣です。
ひとりの命は限りあるものですが、宝石の輝きは永遠です。
家族の愛が、宝石の輝きのように永遠に続いていくように
との思いが込められています。
リフォームすることで、宝石の輝きを取り戻すと共に、
家族の思い出までも新しい世代へと形を変えて受け継がれていくのは
とてもすてきなことですね。