ご子息さまの腕時計修理の相談にご来店されたお客さま。
「腕時計のベルトが外れて使えなくなっているのですが修理できますか」
と壊れてしまった腕時計をご持参くださいました。
腕時計の状態を拝見させてもらうと片側のバネ棒が外れている状態でした。
「バネ棒」とは、腕時計本体とバンド部分をつなげる金具のことです。
一般的な腕時計を裏返して本体とバンドのつなぎ部分をよく見てみると、
バンドのつけ根が筒状になっています。
腕時計のバンドは、端にある「かん穴」という筒の部分に細長い棒状の金具を差しこみ、
両端の出っ張った部分を本体に引っ掛け固定するのです。
このときに、バンドと時計本体をつなぐ役割をしているのがバネ棒です。
腕時計は用途やデザインによって本体やバンドの幅の長さが異なるため、
それぞれの幅に合わせられるように、長さや太さの異なるバネ棒がたくさん用意されていて、
両端の形状が異なるものもあります。
バネ棒は、それぞれの時計に合うものを選んで使いますが、
時計の種類によっては、機種ごとに異なるバネ棒を使っていることもあるので、
よく形状を確認してから同じ種類のバネ棒を取り付けます。
腕時計をよく確認するとバネ棒の部分のパーツが少し曲がった状態になっていたので、
おそらく何か作業をした際に力が加わりパーツが外れてしまったのではないかと思われます。
バネ棒の外れる原因として多いのが、
ぶつけたり高い所から落とすなどの強い衝撃が加わることです。
また、長年使用しているうちに固定部分が劣化して外れてしまうこともまれにあります。
バネ棒が壊れて端の部分が中に入ったまま戻らなくなってしまうと、
バンドが本体にきちんと固定されなくなってしまいます。バックルの場合は、
中間部分の棒が折れてしまうこともあるので、そのときは壊れたバネ棒を外して、
新しいバネ棒と交換することになります。
お客さまの腕時計をお預かりした際に、他にも不具合がないかよく確認したところ
「弓カン」が少し反っており出っ張っている状態でした。
弓カンは、腕時計の本体とベルト部分をつなぐパーツです。
弓カンが変形したままだと、変形した部分が腕に当たってしまい怪我の恐れもあります。
また、弓カンが変形しているとバネ棒が取れやすくなってしまい、ベルトも外れてしまいます。
こちらは、交換するほどの変形ではなかったので、
ニッパーで挟んで変形を元どおりにして修理を行いました。
「息子がプレゼントで頂いた大切な時計だったので修理できてよかったです。
今度は腕時計のバンド交換でも相談にうかがいたいと思います」と仰ってくださいました。
ご子息さまの思い入れのある大切な腕時計を修理することができてよかったです。
これからも何か不具合がございましたらご相談くださいとお話しいたしました。
バネ棒が取れてベルトが外れてしまいました
バネ棒を取り付け、弓カンの反りも修理しました